この問題が分かりにくのは相続税を計算する不動産の評価が論理的に二転三転しているところにある。まず相続税22条で、相続の場合の財産の価額はその取得の時の時価によるとされていて、時価ということは不動産鑑定士などに評価してもらうのかなと思うとそうではなく、土地の場合、評価通達で路線価を元に計算するとされていて実際の「時価」よりもかなり安くなっています。しかしその例外として路線価を元にした決め方が著しく不相当な場合には、別の方法で計算することとされ、その典型例が不動産鑑定士による評価した「時価」なのです。
つまり法律上「時価」とされていながら、原則としてそれは普通に言う「時価」ではなく、ただその価額が著しく不相当な場合には、通常時価とされる不動産鑑定士による評価が使われるのです。
さらにその例外的な場合に該当するのかどうかがまた極めて分かりにくくなっています。
借金をして不動産を買って、その借金と購入が近い将来発生することが予想される相続税の負担を減らすことを知り、かつ、これを期待してあえて借入・購入した場合とされています。借金があれば評価通達の方法で計算すると相続税が減るのでそれを悪用した場合ということをこの最高裁は言ったわけです。
しかし、借金して不動産を購入することはよくあるわけで、借金をして不動産を購入した場合について常に評価通達での計算が否定されているわけではないのです。つまりどれくらい借金したか、どれくらう相続税が減ることになったかという程度問題であって、実際に例外に該当するかどうかはやってみなければわからないということになります。
今後判決が積み重なれば、徐々にこれくらいなら大丈夫、ここまでやると例外に該当するということがわかってくるかもしれませんが、それまでは借金は残りかつ高額な相続税も払わなくてはいけないという事態にもなりうるので注意が必要です。
2022年に出された税務訴訟に関する一番重要と言っても過言ではない最高裁判決を紹介します。事案としては、被相続人が91歳頃に数億の借金をして不動産を購入したのちに、94歳で死亡し、相続人がその1年後に不動産を売却した事案で、相続税の額が争われたもの。
前提知識
まず、相続税法22条は、相続財産の評価について「所得の時における価額」つまり時価で評価することとしている。しかし個別に時価を判断することは手間もかかり公平を害する危険もあるので評価通達において、市街地の宅地の評価は路線価によるものとされ公示価格の8割程度とされている。ただし、評価通達の定める評価方法によって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて別の方法で評価することとしている
最高裁の概要は以下のとおり
「租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも上記に述べたことに照らせば、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではない」
次回解説します。
西南学院大学で、判例検討をする税法のゼミに参加させていただくことになりました。
ひたむきに議論する大学院生と一緒にいると、本当に刺激を受けますし、勉強になります。皆さん、税理士を目指している方なので、真剣そのものです。
専門知識を身につけて、税務事件を専門にできるように努力いたします。
まだ発展途上ですが、それでもよければ、気軽にご相談ください。
2018年前期、大学院で税法のゼミ「租税法論特殊講義A」に参加
租税訴訟法学会会員
税務署から更正決定を受けたが、納得できない。
税金の滞納処分を受けたが、納得できない。
税理士の説明に納得ができない。
・税務意見書作成 22万円
・着手金
再調査の請求 33万から55万円
審査請求 55万から88万円
税務訴訟 1年目110万円から220万円 2年目以降(1年ごと) 55万円から110万円
再調査の請求から審査請求に移行する場合,審査請求から税務訴訟に進行する場合にも着手金は3分の2に減額。
・報酬(再調査及び審査請求)
経済的利益(取消された税額)をもとに計算
300万円以下の部分 22%
300万円を超え3000万円以下の部分 16.5%
3000万円を超え3億円以下の部分 8.8%
3億円を超える部分 6.6%
・報酬(税務訴訟)
300万円以下の部分 27.5%
300万円を超え、3000万円以下の場合 16.5%
3000万円を超え、3億円以下の部分 11%
3億円を超える部分 6.6%
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また、更正決定や滞納処分について税務署と交渉します。
交渉で解決しない場合には、税務訴訟を提起します。