難しいけど、知っておくべきトピックについてわかりやすく!

後援等テーマ

  • 個人情報保護(2015年の改正を踏まえて企業はどうすべきか)
  • 企業の社会的責任(国連での議論・企業分野ごとに特に気をつけるべきこと
  • 外国人の雇用(ビザの取得の仕方、技能実習制度)

費用等

  • 講演等費用 5万円(消費税別、以下同じ)(質疑応答を含め2時間)(今後に役立つ資料つき)
  • 交通費 実費(できるだけ安い手段で伺います)
  • 宿泊費 実費(どうしても日帰りできない場合のみ)(普通のビジネスホテル)
  • 日当 

   講演時間を除き、往復の移動に2時間

   以上かかった場合    3万円

   4時間以上かかった場合 5万円

   7時間以上かかった場合 10万円

 


借入をして購入した不動産の相続における相続税に関する最高裁判決2

この問題が分かりにくのは相続税を計算する不動産の評価が論理的に二転三転しているところにある。まず相続税22条で、相続の場合の財産の価額はその取得の時の時価によるとされていて、時価ということは不動産鑑定士などに評価してもらうのかなと思うとそうではなく、土地の場合、評価通達で路線価を元に計算するとされていて実際の「時価」よりもかなり安くなっています。しかしその例外として路線価を元にした決め方が著しく不相当な場合には、別の方法で計算することとされ、その典型例が不動産鑑定士による評価した「時価」なのです。

つまり法律上「時価」とされていながら、原則としてそれは普通に言う「時価」ではなく、ただその価額が著しく不相当な場合には、通常時価とされる不動産鑑定士による評価が使われるのです。

 

さらにその例外的な場合に該当するのかどうかがまた極めて分かりにくくなっています。

 

借金をして不動産を買って、その借金と購入が近い将来発生することが予想される相続税の負担を減らすことを知り、かつ、これを期待してあえて借入・購入した場合とされています。借金があれば評価通達の方法で計算すると相続税が減るのでそれを悪用した場合ということをこの最高裁は言ったわけです。

 

しかし、借金して不動産を購入することはよくあるわけで、借金をして不動産を購入した場合について常に評価通達での計算が否定されているわけではないのです。つまりどれくらい借金したか、どれくらう相続税が減ることになったかという程度問題であって、実際に例外に該当するかどうかはやってみなければわからないということになります。

 

今後判決が積み重なれば、徐々にこれくらいなら大丈夫、ここまでやると例外に該当するということがわかってくるかもしれませんが、それまでは借金は残りかつ高額な相続税も払わなくてはいけないという事態にもなりうるので注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

借入をして購入した不動産の相続における相続税に関する最高裁判決1

2022年に出された税務訴訟に関する一番重要と言っても過言ではない最高裁判決を紹介します。事案としては、被相続人が91歳頃に数億の借金をして不動産を購入したのちに、94歳で死亡し、相続人がその1年後に不動産を売却した事案で、相続税の額が争われたもの。

 

前提知識

まず、相続税法22条は、相続財産の評価について「所得の時における価額」つまり時価で評価することとしている。しかし個別に時価を判断することは手間もかかり公平を害する危険もあるので評価通達において、市街地の宅地の評価は路線価によるものとされ公示価格の8割程度とされている。ただし、評価通達の定める評価方法によって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて別の方法で評価することとしている

 

最高裁の概要は以下のとおり

「租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも上記に述べたことに照らせば、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではない」

 

次回解説します。

 

 

 

 

【判例解説】説明義務違反が問題となった最高裁判決(最高裁平成18年10月27日判決)③

最高裁判決は、高裁判決より2点説明義務が追加され、その2点が説明されていないので説明義務違反がある可能性があるとして、高裁に差し戻しました。

 

①で書いたように規範は同じです。2つ以上の選択肢がある場合には、「それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められる」

 

そして高裁はそれを分かりやすく説明したと判断しました。

 

ここからは私の意見も入ります。最高裁は、まず、一般的な医学的知識の他に、「このような場合にはいずれにせよ開頭手術が必要になるという知見を有していたことがうかがわれ,また, そのような知見は,開頭手術やコイルそく栓術を実施していた本件病院の担当医師らが当然に有すべき知見であったというべきであるから,同医師らは,太郎に対して ,少なくとも上記各知見について分かりやすく説明する義務があったというべきである」と述べて、特に知っていたこと、当然知っているべきことについても説明義務があると最高裁は考えたと思います。つまり常識的なこと以外にその医師が知っていた知識や知っているべき知識も惜しまず説明する必要がある。

 

そして2点目として、一般的な知識だけではなく、「上記のとおりカンファレンスで判明した開頭手術に伴う問題点について具体的に説明する義務があったというべきである」として、患者を検査する過程で知ったことも説明する義務があるとしたのです。

 

まとめると、高裁はその病気や治療についての一般的な知識について分かりやすく説明すれば足りるとしたのに対して、最高裁は、それプラス、担当した医師や病院が特に知っていたまたは知っているべき一般的知識と、その患者さんの検査などで知った個別の知識についても説明義務があると判断したというのが私の解釈です。

 

病院としては説明は十分にしたと主張すると思いますが、上記のようなことまで含めて説明ががあったかどうか慎重に検討する必要があると思います。

 

【判例解説】説明義務違反が問題となった最高裁判決(最高裁平成18年10月27日判決)②

前回の続きです。

 

まず事実経過として、患者の未破裂脳動脈瘤については、治療を受けずに保存的に経過をみること、開頭手術による治療を受けること、コイル塞栓術による治療を受けることの3つの選択肢が存在していたこと(どれを選ぶかは患者次第と病院側は説明しました)、患者は一旦開頭手術を選択したが、手術予定の2日前に患者の動脈瘤が開頭手術をするのが困難な場所にあることが分かり、コイル塞栓術を勧められて患者もそれに応じたという特殊事情がありました。

 

この経過を踏まえて、高裁判決では、「控訴人病院の担当医師らは,Aに対し,動脈瘤の危険性,Aが採り得る選択肢の内容,それぞれの選択肢の利点と危険性,危険性については起こりうる主な合併症の内容及び発生頻度並びに合併症による死亡の可能性を説明したということができ,説明義務違反は認められない」としました。

 

これに対して最高裁判決では、

 

「記録によれば,本件病院の担当医師らは,開頭手術では,治療中に神経等を損傷する可能性があるが,治療中に動脈りゅうが破裂した場合にはコイルそく栓術の場合よりも対処がしやすいのに対して,コイルそく栓術では,身体に加わる侵襲が少なく,開頭手術のように治療中に神経等を損傷する可能性も少ないが,動脈のそく栓が生じて脳こうそくを発生させる場合があるほか,動脈りゅうが破裂した場合には救命が困難であるという問題もあり,このような場合にはいずれにせよ開頭手術が必要になるという知見を有していたことがうかがわれ,また, そのような知見は,開頭手術やコイルそく栓術を実施していた本件病院の担当医師らが当然に有すべき知見であったというべきであるから,同医師らは,太郎に対して ,少なくとも上記各知見について分かりやすく説明する義務があったというべきである」

 

「また,前記事実関係によれば,太郎が平成8年2月23日に開頭手術を選択した後の同月 27日の手術前のカンファレンスにおいて,内けい動脈そのものが立ち上がっており,動脈りゅう体部が脳の中に埋没するように存在しているため,恐らく動脈りゅう体部の背部は確認できないので,貫通動脈や前脈絡叢動脈をクリップにより閉そくしてしまう可能性があり,開頭手術はかなり困難であることが新たに判明したというのであるから,本件病院の担当医師らは,太郎がこの点をも踏まえて開頭手術の危険性とコイルそく栓術の危険性を比較検討 できるように,太郎に対して,上記のとおりカンファレンスで判明した開頭手術に伴う問題点について具体的に説明する義務があったというべきである」としました。

 

長くなったので次回解説します。

【判例解説】説明義務違反が問題なった最高裁判決(最高裁平成18年10月27日)①

医療過誤事件でよく問題となる論点として、前回まで判例を紹介した画像の見落としの他に、説明義務違反があります。歯科や美容整形も含めあらゆる分野の医療で問題となる論点で、依頼者としても、手術のミスよりも説明がなかったというほうが分かりやすいので相談者のほとんどが主張されます。

 

裁判でもよく争点になる論点ですが、最近検討した最高裁判決を紹介したいと思います。半年に一度裁判所で、医療側弁護士、患者側弁護士、裁判官が集まって一つの判決を議論するのですが、最近そこで取り上げられた判決です。

 

最高裁平成18年10月27日判決です。事案は、未破裂脳動脈瘤の存在が確認された患者がコイルそく栓術を受けたところ、術中にコイルがりゅう外に逸脱するなどして脳こうそくが生じ死亡した事案において判示の事情の下においては、開頭手術とコイルそく栓術のいずれかを選択するか等について患者に対して充分な説明を行ったか否かについて明らかでなく、担当医師に説明義務違反がないとはいえないとされた事案です。

 

実はこの判決の前に平成10年と平成13年に説明義務について判断した最高裁判決があり、どういう説明をするかという一般論は既に確立していて、高裁も最高裁もその一般論に基づいて判断したのですが、高裁はその一般論通り十分説明したと判断したのに対して、最高裁は不十分という判断をして食い違いました。

 

その一般論は以下の通りです。

「医師は,患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては,診療契約に基づき,特別の事情のない限り,患者に対し,当該疾患の診断(病名と病状),実施予定の手術の内容,手術に付随する危険性,他に選択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後などについて説明すべき義務があり,また,医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には,患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上判断することができるような仕方で,それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められると解される(最高裁平成10年(オ)第576号同13年11月27日第三小法廷判決・民集55巻6号1154頁参照)」

 

分かりやすく説明することが求められるとされている点が注目すべき点です。ただ、もちろん分かりやすいかどうかは、人によって評価が異なるので、裁判官の間でも評価が分かれました。

 

次回、高裁と最高裁の判断内容を説明します。