前回の続きです。前提として交通事故にあった場合慰謝料に2種類あることを理解することが重要です。
一つが、病院に入院したり通院したりして、治療するのに苦労したという、入通院慰謝料。
これは通常単純に、入院した期間、通院した期間で額が決まります。長ければ長いほど、苦労したでしょうということでたくさんもらえます。病院に行ったり、入院したりするの嫌ですよね。簡単に言えばその気持ちに対する慰謝料です。
もう一つが、後遺症が残ってこの後の人生が辛い、ということに対する慰謝料。この後の人生、ずっと後遺症を抱えて生きていかなければならない、辛い、その気持ちに対する慰謝料です。
ということは、後遺症が重ければ重いほど、慰謝料がたくさんもらえるということになりますね。
その点が分かっていれば、今回の判例が逆にあれっ変だなと思うはずです。つまり、この判決は、交通事故による後遺症はありませんと認定しながら、入通院慰謝料とは別に慰謝料を認めたからです(正確に言うと14級を超える後遺症はありませんとしながら、14級で通常認められる慰謝料より多額の慰謝料を認めた)。
後遺症には重いほうから1級から14級までのランク付けがあり、1級なら慰謝料いくら、2級ならいくらと相場は決まっています。ただ、よく考えたら、当たり前ですが、後遺症は先ほど書いたように辛い気持ちに対する賠償で、感じる辛さは人それぞれです。同じ級だから同じ辛さということはあり得ません。ただ、交通事故は多数あり1件ずつ個別に辛さ度合いを確定することは煩雑であること、人それぞれではありながら逆に同じような後遺症では同じくらいの慰謝料を認定しないと不公平になることなどから、通常はほとんど機械的に1級ならいくらと決めているわけです。そうすると、ついこの事件は14級だからいくらしか慰謝料取れないなと考えながら交渉する危険が出てきますが、中にはこの事件のように通常認められない慰謝料が認められたり、通常認められる慰謝料額より多くの慰謝料が認められたりすることもあるので、後遺症が何級になるかということとは別に、慰謝料がもっと取れないかも常に考える必要があると思います。