最高裁令和3年5月25日判決である。
事案を簡略化すると、アメリカで原告が被告に対する損害賠償請求訴訟を提起し、通常の損害賠償金として18万5000ドル、日本で認められていない懲罰的損害賠償として9万ドルの支払いを受ける判決を得た。その後13万5000ドルの弁済を受けた。その後日本にある被告の財産に強制執行をかけることができるのは、全体から13万5000ドルを引いた額か、18万5000ドルから13万5000ドルを引いた額に過ぎないのかが争われた事例。
原判決(大阪高裁令和元年10月4日判決)は、全体から13万5000ドル引いた額について強制執行できると判断したが、最高裁は18万5000ドルから13万5000ドルを引いた額しか強制執行できないとした。
この争いが起きる原因は日本では懲罰的損害賠償が認められないので、本件で一切事前に弁済を受けていなくても、日本では18万5000ドル分しか強制執行できない点にある。しかしながら本件のようにアメリカで事前に弁済を受けた分はアメリカでは有効と思われるので、懲罰的損害賠償分はアメリカで先に支払われたと考えて、全体から13万5000ドル分引いた分について強制執行できるとも考えられるのである。
しかし最高裁はおそらくその立場を取ると、結局日本法上懲罰的賠償を取得することを認めることになるので、それはできないと考えたものと思われる。
今後懲罰的損害賠償を取得できた場合にはアメリカで全額回収すべきということになる。日本にしか財産がない場合には結局日本では懲罰的損害賠償の部分は強制執行できないので、アメリカで提訴する場合には後でどこで強制執行をするかまで視野に入れて請求額を定めたほうがいいということになる。
膨大な金額の判決をもらって膨大な報酬弁護士に支払ったのちに少ししか結局回収できないという目も当てられない結果にならないようにすべきと思われる。