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【判例解説】画像診断の見落としが問題となった事例(東京地裁平成23年4月14日判決)②

CT画像の見落としについては否定されましたので、次にMRI画像の見落としについて問題となりました。CT画像の見落としが否定されたので、MRI画像の見落としも否定されたのかと思われるかもしれませんが、こちらは見落としが肯定されました。しかも、元々癌があると思われていたところと違う箇所に癌が存在していたのですが、見つけられなかったことに過失が認められました。

 

まず、MRIとCTでどうして結論が違うことになったのかについては以下のように述べました。

 

肝内胆管癌のMRI検査がCT検査より有用であることを確認した上で、肝内胆管癌のMRI画像所見に関する医学的知見と、本件MRI検査画像上に認められる所見は矛盾しないこと(肝内胆管癌がMRI画像でどのように映るかという特徴と、実際の画像の特徴が一致していたこと。つまりどのような画像になるかの知識があれば見つけやすい画像だったということです)を認定しました。

 

簡単にいうとMRIのほうが見つけやすい癌だったことと、癌があればMRIにはこう映るという典型的な写り方をしていたのに気づかなかったことから過失が認められました。

 

もう一つの論点の、撮影目的となる部位とは別の部位に疾患の存在を示す所見がある場合の過失の有無についても以下のように述べて過失を認めました。

 

「CT検査報告書の検査目的欄及びMRI検査報告書の臨床診断欄のいずれにも記入されていたC型肝炎は、肝の原発性悪性腫瘍の95%を占める肝細胞癌の大きな病因であること、肝細胞癌の特徴的な性格として、門脈や肝静脈内に好んで進展し、経門脈性肝内移転を起こしやすいこと、肝硬変では多中心性に発癌する可能性があることをも併せ考えると 本件超音波検査で約10mmの腫瘤が認められた部位(S5又はS8)以外の分にも癌が存在する可能性があるといえる。

そうであるとすれば、本件で、CT検査報告書の臨床診断欄に、本件超音波検査で見られた肝臓のS5又はS8の部位にある10mm大の低エコー腫瘤の所見が記載され、特にこれらの箇所についての注意喚起がされていたとしても 本件腫瘤の存在したS1区域を含む肝臓のその他の区域についても C医師は慎重に読影すべきであったというべきである」

 

ちょっと難しいですが、簡単にいうと、肝臓の癌であればよく見つかる箇所があって、肝臓癌の可能性があることはわかっていたのだから、そこの部分もちゃんと見るべきだったという判断です。元々の検査で癌があるかもと疑われていたのは別の箇所だったので、医師はその部分だけを見て癌は存在しないと判断してしまったのです。病院側は毎日たくさん画像見なければいけないから1枚ずつそんなに丁寧には見ることができないとは言ったのですが、通りませんでした。確かに忙しいからちゃんとできなくてもしょうがないとは言えないですよね。

 

日々、患者側に立った仕事しておきながらなんですが、お医者さんも大変です。