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【判例解説】説明義務違反が問題となった最高裁判決(最高裁平成18年10月27日判決)③

最高裁判決は、高裁判決より2点説明義務が追加され、その2点が説明されていないので説明義務違反がある可能性があるとして、高裁に差し戻しました。

 

①で書いたように規範は同じです。2つ以上の選択肢がある場合には、「それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められる」

 

そして高裁はそれを分かりやすく説明したと判断しました。

 

ここからは私の意見も入ります。最高裁は、まず、一般的な医学的知識の他に、「このような場合にはいずれにせよ開頭手術が必要になるという知見を有していたことがうかがわれ,また, そのような知見は,開頭手術やコイルそく栓術を実施していた本件病院の担当医師らが当然に有すべき知見であったというべきであるから,同医師らは,太郎に対して ,少なくとも上記各知見について分かりやすく説明する義務があったというべきである」と述べて、特に知っていたこと、当然知っているべきことについても説明義務があると最高裁は考えたと思います。つまり常識的なこと以外にその医師が知っていた知識や知っているべき知識も惜しまず説明する必要がある。

 

そして2点目として、一般的な知識だけではなく、「上記のとおりカンファレンスで判明した開頭手術に伴う問題点について具体的に説明する義務があったというべきである」として、患者を検査する過程で知ったことも説明する義務があるとしたのです。

 

まとめると、高裁はその病気や治療についての一般的な知識について分かりやすく説明すれば足りるとしたのに対して、最高裁は、それプラス、担当した医師や病院が特に知っていたまたは知っているべき一般的知識と、その患者さんの検査などで知った個別の知識についても説明義務があると判断したというのが私の解釈です。

 

病院としては説明は十分にしたと主張すると思いますが、上記のようなことまで含めて説明ががあったかどうか慎重に検討する必要があると思います。