2022年に出された税務訴訟に関する一番重要と言っても過言ではない最高裁判決を紹介します。事案としては、被相続人が91歳頃に数億の借金をして不動産を購入したのちに、94歳で死亡し、相続人がその1年後に不動産を売却した事案で、相続税の額が争われたもの。
前提知識
まず、相続税法22条は、相続財産の評価について「所得の時における価額」つまり時価で評価することとしている。しかし個別に時価を判断することは手間もかかり公平を害する危険もあるので評価通達において、市街地の宅地の評価は路線価によるものとされ公示価格の8割程度とされている。ただし、評価通達の定める評価方法によって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて別の方法で評価することとしている
最高裁の概要は以下のとおり
「租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも上記に述べたことに照らせば、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではない」
次回解説します。