交通事故事件(損害賠償請求、過失割合の立証、後遺障害の立証など)

交通事故事件に関する当事務所弁護士の経歴

弁護士会の交通事故相談名簿に登録。常時4、5件交通事故受任。

 

福岡県弁護士会交通事故委員会に所属し、毎月行われる交通事故の判例研究会に参加し報告も担当。

 

交通事故紛争処理センターの嘱託弁護士として約2年以上活動し、数十件の案件を処理。

 

 

日本賠償科学会に所属し、損害賠償に関する学問的な研鑽も行っている。

 

http://www10.showau.ac.jp/~baisyo/gakkai-annai/Frameset-ga1.html

 


どんな時に弁護士が必要なの?

交通事故の被害にあったが、どうやって損害賠償の額を計算したらいいかわからない

 

保険会社から賠償金額の提案がなされているが、妥当な金額なのかどうか判断がつかない

 

いまだに痛みがあり、後遺症があると考えているのに、保険会社から後遺症は存在しないと言われた

 

事故の当事者間でどちらが悪かったのかについて争いがある。

弁護士は何をしてくれるのですか?

医師と協力して、後遺症の認定が獲得できるように努力します。

 

妥当な損害額を計算して、相手方と交渉します。

 

裁判で、被害者に代わって主張したり、証拠を提出してできるだけ多く損害賠償を獲得できるように努力します。

費用はどうなりますか?

交通事故の場合は、費用の支払い方法は2つあります。

 

一つは、弁護士費用特約(LAC)による方法です。

 

被害者の方が弁護士費用特約(LAC)という、

交通事故の場合の弁護士費用を保険会社が支払ってくれる保険に入っている場合には、その保険を使って弁護士費用をいただきます。この場合には、被害者の方は費用を支払う必要はありません。(当事務所はLACの利用が可能です。)

 

二つ目の方法として、

この保険に入っていない場合は、着手金ゼロで、回収した額の1割プラス20万円を解決したときにいただくという方法もあります。

 

この場合には、依頼者が費用を支払う必要がありますが、獲得した保険金の中から支払うので、自分の財布からお金を出す必要はありません。

 

 


高次脳機能障害の判例

毎月弁護士会で行われている交通事故判例検討会に参加しました。

毎月4つの判決を検討しますが、今月はそのうち2つが高次脳機能障害の判決でした。

依頼者にもそう認定される可能性の人がいて熱心に聞いていましたが、画像の評価や事故後に意識喪失の時間や性格の変化や能力の減退など判断が難しいものも多く裁判で争われる例も多いようでした。

私の依頼者の事例は争われなければいいけど。

判例紹介(交通事故)(後遺障害等級の認定が認められない場合の慰謝料での調整)その3

前回の続きです。

 

後遺障害等級とは別に慰謝料で調整されることが多い類型がありますので、知っておくと便利だと思います。交通事故に遭って下記のような障害を負った場合には、等級とは別に慰謝料もっと取れないか考えてみる価値がある類型だということです。

 

慰謝料で斟酌した事案(『損害賠償額算定基準上巻』いわゆる赤本での整理)(2018年版195頁以下)

(1)自賠責14級に至らない後遺症があった場合等

   外貌醜状の例多数。

   頚椎捻挫の例も。

   「14級に至らない頚部痛、跛行、左股関節痛等の運送業務勤務(男・年齢不明)につき、労働能力喪失まで認めるに足りる証拠はないとしたが、これが日常生活や社会復帰を躊躇させ、将来への不安を抱かせる要因ともなっている点を斟酌し、他方で既往歴(左変形股関節症)が影響していることも考慮して100万円を認めた」(東京地判平成12年1月19日)

   「頚部痛、頭痛、腰痛、右第4及び第5指の痺れの症状(等級非該当)の契約社員・運転手(男・年齢不明)につき、症状が相当期間継続することが予想され、頑固な神経症状を残すとして、傷害分156万円、後遺障害分100万円を認めた」(さいたま地判平成18年10月10日)

 

(2)より上級の等級に至らない場合

   外貌醜状の例(4例中3例)

   「醜状痕の高校3年生(女)につき、労働能力の喪失に着目した自賠法施行令別表を機械的にあてはめるのではなく、被害者の受けた客観的な精神的苦痛を具体的に判断するべきとして400万円を認めた(神戸地判平成7年11月8日)

 

(3)既存障害のある被害者の事例

   多様な類型

   「左膝疼痛(12級12号)の主婦(固定時68歳)につき、事故の2年4ヶ月前の左膝関節置換術にて8級7号の既往症を有していたものの、事故当時、同手術によって膝の疼痛の苦しみから解放されていたにも関わらず、再び左膝関節の疼痛に苦しめられるようになったこと等を考慮して、傷害分200万円、後遺障害分300万円を認めた(京都地判平成14年12月12日)

 

(4)逸失利益の算定が困難または不可能な場合

  ア 外貌醜状等

  イ 歯牙障害

  ウ 嗅覚障害

  エ 骨盤骨変形

  オ その他

 

(5)将来の手術費の算定が困難または不可能な場合

   「右股関節脱臼骨折による右下肢短縮、股関節機能障害等(8級)の水道工事現場監督(男・固定時34歳)につき、将来股関節の人工関節置換手術が必要であるが、時期・費用が不明で、手術により失われる労働能力の程度も判然としないため損害額を算定することが不可能なので慰謝料で考慮するとし、本来の後遺障害分700万円のほかに800万円の慰謝料を認めた(神戸地裁平成10年9月24日)

判決紹介(交通事故)(後遺障害等級の認定が認められない場合の慰謝料での調整)その2

前回の続きです。前提として交通事故にあった場合慰謝料に2種類あることを理解することが重要です。

 

一つが、病院に入院したり通院したりして、治療するのに苦労したという、入通院慰謝料。

これは通常単純に、入院した期間、通院した期間で額が決まります。長ければ長いほど、苦労したでしょうということでたくさんもらえます。病院に行ったり、入院したりするの嫌ですよね。簡単に言えばその気持ちに対する慰謝料です。

 

もう一つが、後遺症が残ってこの後の人生が辛い、ということに対する慰謝料。この後の人生、ずっと後遺症を抱えて生きていかなければならない、辛い、その気持ちに対する慰謝料です。

ということは、後遺症が重ければ重いほど、慰謝料がたくさんもらえるということになりますね。

 

その点が分かっていれば、今回の判例が逆にあれっ変だなと思うはずです。つまり、この判決は、交通事故による後遺症はありませんと認定しながら、入通院慰謝料とは別に慰謝料を認めたからです(正確に言うと14級を超える後遺症はありませんとしながら、14級で通常認められる慰謝料より多額の慰謝料を認めた)。

 

後遺症には重いほうから1級から14級までのランク付けがあり、1級なら慰謝料いくら、2級ならいくらと相場は決まっています。ただ、よく考えたら、当たり前ですが、後遺症は先ほど書いたように辛い気持ちに対する賠償で、感じる辛さは人それぞれです。同じ級だから同じ辛さということはあり得ません。ただ、交通事故は多数あり1件ずつ個別に辛さ度合いを確定することは煩雑であること、人それぞれではありながら逆に同じような後遺症では同じくらいの慰謝料を認定しないと不公平になることなどから、通常はほとんど機械的に1級ならいくらと決めているわけです。そうすると、ついこの事件は14級だからいくらしか慰謝料取れないなと考えながら交渉する危険が出てきますが、中にはこの事件のように通常認められない慰謝料が認められたり、通常認められる慰謝料額より多くの慰謝料が認められたりすることもあるので、後遺症が何級になるかということとは別に、慰謝料がもっと取れないかも常に考える必要があると思います。

 

 

 

 

 

判決紹介(交通事故)(後遺障害等級の認定が認められない場合の慰謝料での調整)その1

長いので何回かに分けて紹介します。まずは、判決の内容。

 

東京地裁平成29年12月22日判決(平成28年(ワ)第29729号、自保ジャーナル2019⑦)

 

1 テーマ 後遺障害等級の認定が認められない場合の慰謝料での調整

 

2 事故の概要

(1)原告車 普通自動二輪車

(2)被告車 普通乗用自動車

(3)事故日 平成25年11月14日

(4)事故態様 反訴被告運転の普通乗用自動車が、交通整理の行われていない丁字路交差点を直進進行しようとして、突き当り路から上記交差点を右折進行してきた反訴原告運転の普通自動二輪車の後部に上記乗用自動車の前部を衝突させ、反訴原告を上記二輪車から転倒させた。

 

3 主な争点の判断

(1)反訴原告の後遺障害の内容及び程度、症状固定時期

  ア 右肩関節について(肩峰下インビンジメント症候群やバンカート損傷の有無)

    本件事故から約2年後に初めて右肩のMRI検査を受けており、その結果を踏まえて、医師はインビンジメント症候群及びバンカート

   損傷について、その「疑い」を指摘するにとどめていること、また別の医師は、肩峰下インビンジメント症候群合併したと判断した

   ものの、それはあくまで、腱板損傷が本件事故によるか否かは反訴原告の申告のみに依拠する旨を述べているところ、反訴原告の棘

   (きょく)上筋損傷が本件事故により生じたかは確認されていない。反訴原告は本件事故後も右肩を反復して脱臼していたから、上

   記損傷が本件事故後に発生した可能性もある。さらに、本件事故前から肩関節の脱臼歴があったことがうかがわれることからする

   と、上記損傷が平成22年9月4日から本件事故発生日までの間に発生した可能性もある。

    以上より、反訴原告が、本件事故により、反訴原告の右肩関節に、その可動域制限を生じさせるような、肩峰下インビンジメント

   症候群やバンカート損傷等の傷害を負ったとは認められない。

  イ 肩関節の可動域制限について

    肩関節の可動域については、肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)だけでなく、胸鎖関節等の動きが関係していることから、本件事故

   前に肩鎖関節に起因する肩関節の可動域制限の後遺障害があれば、その障害が該当する等級よりも現存する障害の該当する等級が重

   くならなければ、自賠責保険における後遺障害として評価することはできないところ、反訴原告は、前件事故により、右肩関節の機

   能障害について、その可動域が健側(けんそく)(左肩関節)の可動域角度の4分の3以下に制限されているとして、別表第二第12

   級6号の認定がされていた。

    しかしながら、医師において、反訴原告に再脱臼の恐怖感があることを認識しながらなお、真に他動の可動域を計測したかは疑問

   がある。

    そうすると、反訴原告が、本件事故により、右肩関節の可動域制限を残すような傷害を負ったと認められるとしても、本件後遺障

   害診断書の記載によっては、右肩関節の外転の他動の可動域について、健側(けんそく)である左肩の可動域について、健側である左

   肩の可動域180度の2分の1である90度以下に制限されていたとは認められず、他に、原告の右肩関節の可動域について、別表第

   二12級6号を超える制限が残ったと認めるに足りる証拠はない。

 

  イ 腰部神経症状について

         本件事故以前から、藩祖原告の腰部には、別表第二14級9号に該当する神経症状が残存していたと認められる。したがって、本件事故により負った腰椎捻挫により生じた症状は、別表第二第14級9号より重い等級とならなければ、自賠責保険における後遺障害として評価することはできない。

    反訴原告は、H大学の相撲部員であった平成9年頃から既に腰椎椎間板ヘルニアと診断され、腰部用のコルセットの使用を継続していたところ、平成23年6月にも改めてコルセットを作成してもらうに当たり腰椎椎間板ヘルニアと再度診断されていた上、平成25年月4日から同年10月1日まで、腰痛・左坐骨神経痛(左下肢神経痛)を訴えてFクリニックを受診していたのであって、これらの腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症等が本件事故により発症したとは認められない。

    したがって、反訴原告の腰部から左下肢にかけての症状については、自賠責認定どおり、他覚的に神経系統の障害が証明されたとはいえず、別表第二第14級9号を超える後遺障害が残存したとは認められない。

 

 (2)慰謝料

    反訴原告の腰部神経症状について、他覚的所見が認められないため別表第二第14級9号を超える後遺障害等級認定をすることが

   できないとしても、本件事故前からの腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊椎管狭窄症に加え、本件事故による影響もあり、反訴原告の腰部

   神経症状が前記認定事実のような経過をたどったと認められることは、慰謝料算定の一要素として併せ考慮するのが相当であり、本

   件事故と相当因果関係のある慰謝料を220万円と認める。